アベノミクスの1/6

 『アベノミクス』という言葉が市民権を得て久しいですが、最近は森友問題ばかりで話題にもならないですね。賛否は分かれますが、アベノミクスは停滞していた日本経済を動かすという点で大きな意味があったと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

まず、アベノミクスを理解するうえで大切な言葉があります。「三本の矢」です。聞いたことがある人も多いかもしれませんが、以下の3つを指します。

 

 

 

 

一本目:大胆な金融政策
二本目:機動的な財政政策
三本目:民間投資を喚起する成長戦略

 

 

 

さらにその後、以下の「新三本の矢」を持ち出し計6本になりました。

 

 

 

 

四本目:希望を生み出す強い経済
五本目:夢を紡ぐ子育て支援
六本目:安心につながる社会保障

 

 

 

 

これだけだとさっぱり分かりませんね。

この中からテーマを絞って見ていきましょう!

 

 

 

 

 

 

 

余談ですが、この「三本の矢」というのは、毛利元就が3人の子どもに伝えたとされる『三本の矢の教え』からきています。三本まとめれば折れにくいということから、結束の重要性を説いたとされています。政策に関しては数が増えれば良いって訳ではなさそうですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、今回はこの6本の矢のうち一本目の『大胆な金融政策』について理解を深めたいと思います。アベノミクスの金融政策の内容というのは、様々なことを省略してざっくり言うと「市場に出回るお金の量を増やす」というものです。どうやって市場に流通するお金を増やすかというと、日本銀行が大量にお金を印刷することでお金を増やします。『異次元緩和』とか『黒田バズーカ』とか呼ばれるものがまさにそれです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お金増やしても一般市民へ配れらる訳ではないし、意味あるの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思う方もいるかもしれませんが、ブログ第2回目の『インフレーション』や第3回目の『円安と円高』を思い出しながら考えて行きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ること約6年。

 

 

 

 

 

2012年12月に第2次安倍内閣が発足し、翌年の2013年3月、日本銀行の総裁に黒田さんという方が就任しました。その際に「消費者物価上昇率(インフレ率)を2%まで高める (前年と比べて2%物が高くなっている状況をつくる)」という目標を定めています。

 

 

 

 

 

 

 

 

このような目標を定めた理由はこれまでの知識から容易に想像できるかと思います。マイルドなインフレは好景気を生むと考えられているから、ですね!

 

 

 

 

 

 

 

目標達成の為に、日本銀行は今日に至るまで頑張ってお金を刷り続けてきました。市中に出回っているお金をマネタリーベースと言いますが、そのマネタリーベースは、当初約135兆円だったのに対し、現在は450兆円超となっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに世の中のお金は増えているのに、私の財布の中身は全く増えていません。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

念の為、お金が増えるとインフレが起こる理由を説明します。

 

 

 

 

例えば、机の上に1万円札が置いてあり「自由にとって下さい。」と言われたら喜んで取ると思うのですが、もし1万円札が石ころにみたくそこら中に腐るほどにばら撒かれていたら同じ様に魅力的なものにはなりません。

 

 

仮に、今まで1万円で時計が買えていたとしたら「そんなどこにでも落ちてる1万円札で時計を買えると思わないで下さい、少なくとも100枚は集めて下さい。」なんて言われてしまいます。

 

 

 

100万回愛してると伝えたら、最後の方は雑音にしか聞こえないのと一緒ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、「為替」についても同様のことが言えます。[¥円]が大量印刷され価値が下がるので、海外の通貨に対して円安となります。第3回の考え方を当てはめれば[¥円]にスモールライトが当たり続けている状態です。円安になれば、海外から輸入してくるものの価格は高くなる為、インフレに寄与するということになります。

 

 

 

さらに、日本の輸出企業は円安によって業績が上がりそれに関連する国内企業も潤うこととなり、日本の経済は好転するという算段です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、景気を刺激する為、大量にお金を刷りインフレを演出しデフレを脱却。『円』を刷れば円安に向かうことから、インフレにも寄与するし、輸出企業が牽引することで日本の経済は明るくなる!このような青写真を描いたことでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それではここから、アベノミクスの棚卸しをしていきましょう。まだ安倍さんは就任中ですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、物価です。物価に関しては、まだ目標の2%を達成していません。最新の2018年度消費者物価指数の見通し(前年比)は+1.3%となっています。黒田総裁が就任した時に、2年で2%を目標としていましたから、かれこれ5年経っていますがまだ未達です。現状、期限については宙ぶらりんになっていますが、19年、20年の見通しを見ても2%には届かない予想です。日本人のデフレマインドは恐るべしですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に、為替です。ドル円の為替レートを見てみましょう。2012年12月末のドル円の為替レートは、1ドル86.58円でした。そして2018年5月25現在のレートは109.58円ですので、26.5%も円安になっています。記憶が正しければ、この期間の間に最大1ドル125円まで円安になっていたので、44.3%も安くなっています。国内の物価は殆ど変わっていないので、ドルで資産を保有していた人は随分と良い思いをしていると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

企業業績はどうでしょうか。輸出企業の雄といえばトヨタですね。ちょうど2018年3月期の決算が発表されたばかりですが、最終利益が2兆4,939億円で過去最高額となりました。これは日本企業としての過去最高額にもなっています。取り巻く環境は楽観的ではないですが、2年ぶりの最高益更新です。日経平均株価の構成も、比較的為替の影響を受けやすい銘柄の寄与度(影響をもたらす度合い)が大きいのですが、その日経平均株価は2012年12月末に1万0395円でしたが、2018年5月25日現在で2万2,450円になっています。

 

 

 勿論、全てが為替の影響という訳ではなく企業努力の部分が大きいのですが、大手企業輸出企業の状況はアベノミクス以前に比べると良好な印象を受けます。そして、日経平均株価に連動する様な運用商品や該当銘柄を保有していた人は、資産が倍以上ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、GDP(国内総生産)と呼ばれる「国が1年間にどれだけ儲けたか」の水準は微増しているものの、直近の1月-3月期においてはマイナス成長を記録しています。手放しで喜べる状況ではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

このように見ると、恩恵を受けた人、そうでない人がはっきりしているような印象を受けます。それもそのはずで、安倍さんの経済政策は『トリクルダウン』という考え方に基づいていると言われています。

 

 

 

 

 

 

トリクルダウンとは、富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透するという理論です。グラスタワーの上からシャンパンを注いで順に上からグラスが満たされていくイメージです。

 

 

 

 

 

 

 

 

満たされていく途中なのか、そもそもこの理論は成り立っていないのか、議論が分かれるところです。私からすると、資産を持つ人、持たない人の間で差が開いた印象を受けます。個人の資産に関して言えば『株』『外貨』『不動産』等を持っていた人、持っていなかった人でこの数年の印象は大きく変わると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうした資産を保有する選択肢があるかないかは、間違いなく金融リテラシーの有無に関係していると考えています。

 

 

 

 

 

 

 

単純に 、『株』『外貨』『不動産』を持てば良いという訳ではなく、世の中の動きを捉えながら資産を選択する力が必要となります。

 

 

 

 

 

 

 

皆さんは、シャンパンタワーの何段目にいるでしょうか。